(2011年4月6日の記事)
訪問マッサージの東京在宅サービス
地域担当営業のみなとです。

春ですね。桜が爛漫と咲き誇る時期となりました。
この季節になると、
どうしても思い出さずにはいられないご利用者様がいらっしゃいます。
「桜の道を、歩いているかな……?」
■ 突然の緊急依頼
「今日、マッサージ来れる!?」
私「は?」
1月15日の土曜日、
休日出勤をしていた私は、
まさに昼食のカップ麺にお湯を注ごうとした瞬間、
携帯電話が鳴り、
その第一声がこの言葉でした。
---時は遡り、12月11日 土曜 午後6時---
お試しマッサージにお伺いした時のことです。
ご利用者様は、S区にお住まいのK.M様。
90歳のご高齢です。
筋力低下がかなり進み、
ほぼ寝たきりに近い状態でした。
マッサージはもともと大変お好きな方でした。
私「K様、いかがですか?気持ちいいですよね」
K様「良いですね。とても…」
私「マッサージ、久しぶりなんですよね」
K様「ええ、入院も長かったですからね…なかなか… 立つのもやっとの状態ですよ…」
私「K様は、このあたりにお住まいになって長いんですか?」
K様「そうですね。もう30年近くにもなりましょうか…」
私「そうですか。このあたりは環境がよいですよね。 少し行けば善福寺川緑地がありますしね」
K様「ええ、いいですよ。春になるとね、それはもう、見事ですよ、桜がねぇ……」
■ 「春になったら、お散歩に」
私「そうですよね。川沿いの桜、本当にすごいですよね。 K様、今は自分の力で座ることも難しい状態ですが、ゆっくりマッサージに運動療法を加えて、しっかり筋肉をつけましょう。
そして、気候がもっとよくなったら、春になったら、お散歩に行けるようになりましょう。
善福寺川沿いの桜を見に。
それまで、焦らず、しっかり筋力をつけましょう」
K様「ええ、そうですね、そうですね……」
数日後には同意書が下り、
訪問マッサージがスタートしました。
春、 桜の道をお散歩することを目指して……
■ 土曜午後の緊急出動
---約一ヶ月後、1月15日 土曜 午後1時10分---
ケアマネジャー様から私の携帯に電話が来たのです。
私「きょ、今日、ですか?」
金丸ケアマネジャー「みなとさ~ん、ごめんね、いきなりで」
電話をしてきたのは、過去の記事「一日の価値」にも登場した金丸さん(仮名)でした。
私「い、いえ。どうされましたか?」
金「実はね、Kさんなんですけど、 かなり病状が進んでいてここ一週間くらいは食事も取ってないんですよ。水分だけで何とか生きている感じなんですよ。浮腫みもひどくって、喋る体力もなくなってるんです。
それでも意識は少しあって、どうしてもマッサージしてほしいっていうのが望みなんです。ハッキリ言ってあと1週間持つかどうかもわからない状況で……
だから、担当の「RO」じゃなくてもいいから、 今日、来れる人、いませんか」
私「かしこまりました。 たぶんスケジュール的に「RO」は行けませんが、 他を探してご連絡致します」
金「ありがとう、電話待っていますね」
それから私は、
S区をまわっているマッサージ師のスケジュールを取り出し、
土曜日の今から、スケジュールがたまたま空いていて、
ルート上にたまたまこの家の近くを通るマッサージ師を探しました。
…他を探して、と約束しましたが…
…簡単にいるわけないよなぁ。
この人は…ダメ、空いていない。
この人は…ダメ、場所がまるきり違う。
この人は…ルートが違う。
この人は…土曜休み、しかも家が遠い。
…そんなうまく都合よく…
……
……
……
…いた!
なんたる偶然でしょう!
すぐに電話をします。移動中か?電車か?出てくれよ~
TBマッサージ師「あ、はい『TB』です」
そう、電話をしたのは、過去の記事「ハッピーエンド」にも登場したTBさんでした。
私「お疲れ様です!みなとです! TBさん、今ドコですか!」
TB「あぁお疲れ様です。今ですか? 次のご利用者様がS並区のN荻なのでそこに向かう前です。 まだS宿区にいますよ。施術が終わったばかりなので。 ただ少し時間があるので報告書を書こうかと」
私「TBさん!お願いがあります! 今からA地区に行ってもらっていいですか?! 緊急で来てほしいご利用者様がいるんです!」
TB「あぁA地区だったら途中なのでいいですよ。 今からなら30分ぐらいかかりますかね」
私「有難うございます! 私は会社にいますので、今から向かいます! ではA駅の南口で!」
TB「わかりました」
そして、金丸ケアマネジャーに電話を掛けなおします。
金ー「はぁい、金丸でぇす」
私「お世話になります!みなとです! マッサージ師、確保できました! 今から向かいますので40分後には行けます!」
金「有難うございます。助かります」
■ 伝わる想い、明日への約束
---40分後、1月15日 土曜 午後2時---
ケアマネジャー様同席のもと、マッサージを行いました。 K様は意識も朦朧としている感じでしたが、時折、
K様「あぁ、あ、あぃ、あぃ」
TB「あ、足ですね?」
K様、満足げに頷かれます。
K様「か、かぁ、かぁ」
TB「肩ですね?わかりました」
K様、満足げに頷かれます。
K様「く、くぉぃくぉ」
TB「腰が今は辛いんですね?わかりました」
K様、満足げに頷かれます。
そんな感じでマッサージが終了しました。
終了後、話すことのできないK様は、震える手でボールペンを握り、 メモ帳にこう書きました。
『あり か とこざいます
あ した お ねかい ま』
ケアマネジャー様がそれを読んで判読します。
金「『有難うございます』って書いたのね? いいのよ、Kさん、気にしなくて。
そして? ああ、『明日もお願いします』ね? Kさん、明日も来てほしいのね?
みなとさん、明日も、大丈夫かしら、日曜だけど」
私「大丈夫です」
実は、ここに到着する前、歩きながら担当の「ROさん」に連絡を入れ、もしK様の要望があれば、日曜だけどマッサージに行けるかどうかの確認を、前もってしていたのです。
金「本当?日曜だけど?」
私「大丈夫です。 既に、明日10時、担当の「RO」の時間を確保しています」
金「お願いね」
■ 最後まで寄り添って
---翌日、1月16日 日曜 午前10時---
私「おはようございます。 K様、マッサージ、来ましたよ」
K様は少し頷かれました。
マッサージ開始。
マッサージ終了直前、K様は水を所望されました。
娘様が水差しで飲ませてあげました。
ほんの少しだけ口に含み、
でも、 それも零れ落ちてしまいました。
マッサージ後、K様は「つめたい」と書かれました。
手足の冷えかな、と思いましたが、
どうやら、 こぼれた水が首の後ろまでまわったようです。
娘様、ROマッサージ師、私の三人で、
意外に大柄で骨太なK様を抱え起こして、
お着替えをしました。
また明日も来ます、
と約束してK様宅をあとにしました。
---同、1月16日 日曜 午後8時20分---
私の携帯が鳴りました。
金「お休みのところ、すみません、 金丸です」
私「とんでもありません。 今朝もK様のところでマッサージを…」
金「有難うございます。 それでね、先ほどね、Kさん、
息を引き取ったんです」
私は全身の力が抜けるのを感じました。
■ 桜の季節に想う
---4月6日 水曜 午後1時頃---
S並区にある、善福寺川緑地公園に、私はいました。
(もちろん、営業活動中で動き回っている最中です)
善福寺川沿いでは桜がちょうど満開です。
花見客もたくさん居ました。
K様も今日あたり天国から下りてきて、
このあたりの桜の道を、歩いているかな……?
あなたに笑顔と悦びを。
訪問マッサージ東京在宅サービス
営業のみなとでした♪
この記事は、過去に公開した記事を、ブログサービスの終了に伴い再編集したものです。 内容の一部は、公開当時の状況や個人情報に配慮して修正しています。

